中医治療学


1、耳鳴りと難聴


病因病機
 
1、情志失調 
  肝の疏泄機能が弱くなると気が滞り、気滞化火となりそれが上炎し、清竅が影響を
 受け耳鳴り・難聴になる。

2、脾胃湿熱
   平素より嗜飲酒厚味がすぎると痰熱が発生しやすく、それが極まると痰火となり、上昇すると
 清竅が影響を受け、耳鳴り・難聴になる。
 
3、脾胃虚弱
   情志不調・飲食不節などにより脾胃が虚弱となり、気血生化の源が不足すると経脈が空虚と
 なり清竅が栄養されなくなり耳鳴り・難聴になる。
 
4、腎虚
  病後の精血不足・房事過多などにより腎精が消耗すると髄海が空虚になり清竅を潤おせず、
 耳鳴り・難聴になる。

弁証

1、肝胆火盛
   突然耳鳴り・難聴が発生、頭痛、耳の脹痛、心煩、怒りっぽい、不眠、口苦口乾、顔面紅潮、
 便秘、舌紅苔黄、脈弦数  

2、痰火うつ結
   耳鳴りが時軽時重、耳に閉塞感、胸悶、口苦、耳下脹痛、脇痛、舌紅苔黄膩 脈弦滑
 
3、脾胃虚弱
   疲労時に増強、疲れやすい、食欲不振、冷え、軟便、舌淡苔薄白、脈細弱
 
4、腎虚
   めまい、足腰が弱い、不眠、夜間・疲労時に増強、手足心熱、舌紅苔少、脈細弱・細数

治法・取穴

1、肝火   清肝泄火
    翳風、聴会、侠渓、中渚、太衝
 
2、痰火   化痰清火
    翳風、聴会、陰稜泉、豊隆、合谷
 
3、脾胃虚弱   補養気血
    翳風、聴会、足三里、三陰交、脾兪
 
4、腎虚   補益腎精
    翳風、聴会、腎兪、関元、太渓

中医薬
1、肝火     竜胆瀉肝湯

2、痰火     温胆湯加減

3、脾胃虚弱  半夏白朮天麻湯

4、腎虚     六味地黄丸



2、眩暈(めまい)


病因病機
 
1、肝陽上亢
   情志不調などにより肝気がうつ結し、さらに進むと気滞化火による肝火上炎、肝陰を損傷し、
肝陽上亢となりめまいとなる。
 
2、痰濁
   飲食不節などにより脾胃虚弱となると、水液代謝作用が弱まり痰湿が内生し、
清陽が阻害されめまいとなる。
 
3、気血両虚
   情志不調などにより脾の運化作用が弱まると、気血の生成が悪くなり頭部を充分栄養できずに
めまいになる。また失血、慢性疾患による気血の損傷による場合もある。
 
4、腎精不足
   先天の本が不足または老年、房事過多、慢性疾患などにより腎精が欠乏すると、髄海(脳)が不足
してめまいとなる。

弁証
 
1、肝陽上亢
   怒りっぽい、顔面紅潮、不眠、多夢、口苦、盗汗、五心煩熱、舌紅苔黄又は苔少ない、脈弦細数
 
2、痰濁
   頭重感、胸悶、食欲不振、嗜睡、嘔吐感、舌苔白膩 脈濡滑
 
3、気血両虚
   顔面蒼白、息切れ、疲労感、不眠、心悸、自汗、食欲不振、舌淡、脈細無力
 
4、腎精不足
   耳鳴り、健忘、不眠、足腰の弱り、聴力低下、五心煩熱、四肢の冷え、舌紅、脈沈細数
   舌淡、脈沈細弱

治法・取穴

1、肝陽上亢    平肝潜陽
    風地、侠渓、陽輔、太衝、太渓
 
2、痰濁       燥湿去痰
    中(月)完、陰稜泉、豊隆、足三里
 
3、気血両虚    補養気血
    百会、脾兪、膈兪、足三里、三陰交 
 
4、腎精不足    補腎滋陰、補腎助陽
    腎兪、関元、太渓、命門、三陰交

中医薬
1、肝陽上亢   天麻釣藤飲

2、痰濁      半夏白朮天麻湯

3、気血両虚   帰脾湯

4、腎精不足   陰虚 六味丸  陽虚 八味丸




3、頭痛


病因病機

1、肝陽頭痛
  怒りやいらいらなどで、肝の気が詰まると化火(熱)となり頭部に上昇して、頭痛となる。
 また、腎が陰虚になると、肝の陽が相対的に強くなり上昇して頭部に影響を及ぼす。
2、腎虚頭痛
  老年や労倦、房事過多などにより、腎精が虚すると脳髄(頭部)が空虚になり頭痛となる。
3、血虚頭痛
  病後や産後など体力が衰えると脾胃虚弱となり、血を生成する力が弱まり血虚となり、脳髄
 を栄養できなくなり頭痛となる。
4、痰濁頭痛
  飲食不節などにより脾の機能が損なわれると水液の代謝が悪くなり、湿邪が内生し、痰濁
 となり、それが脳髄に影響して頭痛となる。

弁証

1、肝陽頭痛
  頭痛、めまい、不眠、いらつき、怒りっぽい、脇腹が痛い、赤ら顔、口中に苦味がある、
 脈弦有力、苔薄黄。
2、腎虚頭痛
  頭痛、めまい、腰痛、足腰に力が入らない、耳鳴り、眠りが浅い、舌紅苔少、脈細無力
3、血虚頭痛
  頭痛、めまい、動悸、疲れやすい、顔色が悪い、舌淡苔薄白、脈細弱。
4、痰濁頭痛
  頭痛、頭がもやもやする、胸のむかつき、吐き気、苔白膩又は白厚、脈滑又は弦滑。
治法・取穴

1、肝陽頭痛
2、腎虚頭痛
3、血虚頭痛
4、痰濁頭痛

中医薬

1、肝陽頭痛
2、腎虚頭痛
3、血虚頭痛
4、痰濁頭痛


4、腰痛


病因病機

1、寒湿邪  
  寒湿の邪気が経絡に入り、気血の運行が阻滞し腰痛。

2、気滞血お
  挫傷、打撲により経脈・経筋が受損し気滞血お 、又は長期にわたる労働による
 慢性筋肉疲労により気血運行阻害になり腰痛。

3、腎虚
  老年性腎気虚、或いは長期の病気による腎虚。又は労欲過度による精血不足に
 よる腎虚。 筋肉に充分な濡養が欠乏し、筋肉が弱くなり腰痛。

弁証

1、寒湿腰痛  
  腰部重だるい、又は局部が緊張し仰俯できない。局部冷感、天候により悪化、または軽減。
 太陽型は下腿後部に放散痛、少陽型は下腿外側に放散痛、舌苔白膩 脉沈遅。

2、気血阻滞腰痛  
  動作時に突然腰痛が起こる、腰痛が頻繁に起こり特に疲労時に腰痛がきつくなる。
 腰部の筋肉が拘縮・緊張、圧痛点が固定、運動制限、疼痛の起因がはっきりしている。
 時に膝窩に絡脉お血が見られる。舌質紫暗、時にお斑、脉渋。

3、腎虚腰痛  
  慢性腰痛、常に腰下肢が重だるい、疲労時に腰痛が増強、多くは局部に筋肉の拘縮
 ・緊張がみられない。下肢に力が入らない。 脈沈細弱

    腎陽虚 下肢・腰部の冷感、陽萎、頻尿、五更瀉、めまい、耳鳴、脉?弱細
    腎陰虚 虚煩不眠、早漏、眩暈耳鳴、口干、健忘、舌紅少苔、脉細数

治法 

   寒湿腰痛    散寒行湿 温経通絡

   気血阻滞腰痛  活血化お 理気止痛
  
   腎虚腰痛    陽虚 温補腎陽
             陰虚 滋補腎陰
取穴 
   
   寒湿腰痛 
              太陽型 腎兪 大腸兪 環跳 委中 崑崙
              少陽型 環跳 大腸兪 風市 陽稜泉 飛陽
   
   気血阻滞腰痛   腎兪 委中 環跳 大腸兪 阿是穴 
   
   腎虚腰痛      腎兪 委中 環跳 大腸兪 太谿 

 

5、鬱症

 

病因病機

1、うつ怒傷肝
  普段より怒りやすい又は不平不満があると、肝気がうつ結して、それが長じると気うつ化火が生じる。
また肝気うつ結が脾に及ぼすと、脾の健運作用が失調して痰湿が生じ気滞痰うつとなる。

2、思慮傷脾
 不安や悩みで心配しすぎると、脾の運化や心気が損傷し気血が失調して、心神が不安になったり、
陰虚火旺となる。

弁証
1、肝気うつ結
 精神抑うつ、情緒不安、ため息、胸脇脹痛、腹脹、軟便、?気、食欲不振、嘔吐、月経不調、苔薄膩、脈弦。
2、気うつ化火
 いらいら、怒りっぽい、胸悶脇脹、呑酸、口干・口苦、便秘、頭痛、充血眼、耳鳴り、舌紅、苔黄、脈弦数。
3、気滞痰うつ
 喉の違和感(詰まり感)、痰は出ない、胸悶、脇痛、苔白膩、脈弦滑。

4、憂うつ傷神
 精神恍惚、心神不寧、悲しみ憂いよく泣く、時々あくびをする、舌淡、苔薄白、脈弦細。

5、心脾両虚
 過度の思慮、心悸、眠りが浅い、健忘、顔色蒼白、頭暈、食欲不振、疲労感、舌淡、脈細弱。

6、陰虚火旺
 めまい、心悸、不眠、いらいら、遺精、腰だるい、月経不調、舌紅、脈弦細・数。

治法・取穴

1、肝気うつ結
   疏肝理気解うつ         肝兪、期門、太衝、中かん、三陰交

2、気うつ化火
   清肝瀉火、解うつ和胃      神門、行間、足竅陰、陽陵泉、内関、内庭

3、気滞痰うつ
   化痰利気解うつ         だん中、太衝、陰稜泉、足三里、豊隆、中かん

4、憂うつ傷神
   養心安神             心兪、巨闕、間使、神門、膈兪、神堂、足三里

5、心脾両虚
   健脾養心、益気補血      脾兪、三陰交、心兪、神門、膈兪、足三里 

6、陰虚火旺
   滋陰清熱、鎮心安神      腎兪、太渓、内関、神門、三陰交、然谷、血海