中医基礎理論
中医基礎理論
中医学とは人体の生理・病理を研究し疾病の診断と疾病の予防及び治療をする科学である。
それは独特の理論体系と豊富な臨床経験からなる。中医学の理論体系は古代の唯物理論と弁証法思想
に影響を受けている。陰陽五行学説の影響のもと、整体観念を主導思想とし、臓腑経絡の生理と病理を
基礎とし、弁証論治を診療の特徴とする医学理論体系である。
すべての物質は陰陽二つの気が相互作用した結果であり、また一切の事物は気の運動による結果である。
人体も自然界の一部として陰陽が常に相互作用しバランスを保ちながら、生命活動を営んでいるのである。
故にこの陰陽のバランスが外的又は内的影響で崩れた時に病理性の反応が発生するのである。
まさしくこのバランスを修復し正常な状態に戻すのが中医学である。
中医学理論の形成と発展
1、黄帝内経
春秋戦国時代(AD3世紀頃)現存する最古の医学文献が出現した。それは春秋戦国時代以前の医療治療
経験をまとめて中医学の独特な理論体系を確立し中医学発展の基礎となるものである。
2、難経
漢時代前(AD2世紀頃)黄帝内経を補足した書物として難経が編纂された。これも黄帝内経とならぶ中医学
理論の基礎となるものである。
3、傷寒雑病論
東漢時代末(BC2世紀頃)張仲景(150〜219)が黄帝内経と難経の理論を基礎にして、自己の臨床経験を
もとに傷寒雑病論を記した(後の傷寒論と金匱要略)。この傷寒雑病論は中医学弁証論治の基礎を確立した。
一、中医学の基本的特徴
1,整体観念
人体の臓器や組織はお互いに協調し、バランスを取ることにより一つの完整された人体を形成している。
すべての臓器はつながりをもって協力して働くことにより個々の臓器は、正常に機能しているのです。
故に一つの臓器の機能が問題があると他の臓器に影響を及ぼすのです。また人体の内的環境は自然界
(季節、気候、昼夜、地域、風土など)や生活環境(仕事、人間関係、飲食など)の外的環境とも密接な関係
にあり、人体の内的環境はこれら外的環境に影響され内臓の機能も低下して自己治癒力や免疫機能も弱く
なり、病気になりやすいのです。中医学とは、この内的環境のバランスを整え、元の完整された人体に戻す
ことを治療目的とし、またそのことにより外的環境に影響されにくい健康な人体を維持するのである。
人体の内的環境は常に外的環境に影響されています。内的環境が弱いと外的環境の影響を大きく
うけて、恒常性のバランスがくずれ疾病という形で表面に現れます。中医学では内的環境のくずれ
を早く見つけだし、 疾病として表面に現れる前にバランスを整えて疾病を予防することができます。
中医学は表面に現れる症状だけを治す対処療法ではなく、内的環境をもとにもどすことにより慢性病
などの疾患にも有効な治療です。
2,弁証論治
弁証論治とは疾病を知り治療するための基本原則である。それは中医学独自の疾病を研究、処理する
方法である。証とは、人体に現れた病理的な変化であり、それは病変部位、原因、性質等を包括している。
それを弁証することにより、正確に疾病の本質を見極める。すなわち、中医学独自の理論による四診
(望、聞、問、切)によって収集された情報により症状と体質を分析し疾病の原因、性質、部位等を証で表す。
そして、論治とはその証に基づき治療方針を決定します。
中医学の理論により疾病を分析し、治療方針を決定します一人一人の体形・性格などが
違うように、同じような病気でも体質により、治療方法も違ってくるのです。
また異なる症状でも病因(内的環境の変化)が同じであれば治療方針も同じなのです。
二、中医基礎理論
人体の内外、表裏、組織と組織、臓器と臓器、筋肉と筋肉など人体を構成するすべての物に必
ず、陰陽の相対的協調関係があり、それらを保持することにより正常な生理活動を維持しているのです。
すなわち、陰陽が相対的に協調してバランスを保ってる状態が健康な状態なのです。
例えば自律神経は交感神経と副交感神経が拮抗して生体機能の恒常性を保っていますが、
これは交感神経が陽であり、副交感神経が陰であるといえ、まさに陰陽のバランスが整体の
バランスを維持しているのです。外的、内的な原因によりこの陰陽の相対関係が乱れると内的
環境が崩れ、疾病として表面に現れるのです。
陽 陰
![]() 正常 |
![]() 陽>陰=実熱 |
![]() 陽<陰=実寒 |
![]() 陽虚=虚寒 |
![]() 陰虚=虚熱 |
| 2, 五行学説とはこの世界の一切の事物は、すべて木、火、土、金、水など五種の基本物質の間で運動変化 により生成されたものであると説かれ、中医学はこれを人体の臓器、組織等の相互関係に当てはめている。 五行学説では、この世界の一切の事物は、木、火、土、金、水など五種の基本物質の間で運動変化により 生成されたものであると、説かれています。 |
![]() |
これら五種類の物質はお互いに影響しあって関係 を保っています。 相生関係 (生とは生じるを意味します) 木生火, 火生土, 土生金, 金生水, 水生木, 相克関係 (克とは抑制を意味します) 木克土, 火克金, 土克水, 金克木, 水克火, 相乗とは、相克関係が過剰になった状態です。 相侮とは、相克関係が逆になった状態です。 |
| 自然界 | 五行 | 人体 | ||||||||
| 五味 | 五色 | 五化 | 五気 | 五臓 | 五腑 | 五官 | 五声 | 形体 | 情志 | |
| 酸 | 青 | 生 | 風 | 木 | 肝 | 胆 | 目 | 呼 | 筋 | 怒 |
| 苦 | 赤 | 長 | 暑 | 火 | 心 | 小腸 | 舌 | 笑 | 脉 | 喜 |
| 甘 | 黄 | 化 | 湿 | 土 | 脾 | 胃 | 口 | 歌 | 肉 | 思 |
| 辛 | 白 | 収 | 燥 | 金 | 肺 | 大腸 | 鼻 | 哭 | 皮毛 | 悲 |
| 咸 | 黒 | 蔵 | 寒 | 水 | 腎 | 膀胱 | 耳 | 呻 | 骨 | 恐 |
| 3、 蔵象学説とは、人体生理、病理現象の観察を通して人体各臓腑の生理機能、病理変化及びその相互関係 を研究する学説である。この蔵象学説では、臓腑の機能により臓・腑・奇恒之腑三種に分けられる。心・肺・ 脾・肝・腎、これらを称して五臓。胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦これらを称して六腑。脳・髄・骨・胆・女子胞 (子宮)・脉を奇恒之腑と称している。 五臓の生理特徴は、化生と精気の貯蔵など。六腑の生理特徴は、主に受納と水穀伝化。奇恒の腑とは、 形態は六腑に似ているが、五臓の精気貯蔵作用を備えている。 蔵象学説の特徴として、五臓を中心とする整体観がある。その整体観とは、臓腑を陰陽に分けて、一つの陰 に対して一つの陽が表裏関係で存在する。すなわち陰である臓に対して陽である腑があり、この二つの陰陽 が一つの整体を表す。心と小腸、肺と大腸、脾と胃、肝と胆、腎と膀胱、心包と三焦が表里関係である。 故にこれらの臓腑は陰陽相対関係であるのでお互いに影響されやすいのである。 以下 臓腑の働きを中医学ではどのように理解しているのか説明します。 (一)心の生理機能 1,主血脉 全身の血液は脉(血管)の中を運行しそれは心臓の拍動により全身に送られ、 それらを濡養(潤し、養う)するのである。 心気の盛衰は面色(顔色)と脉(拍動)に表現される。 2,主神志 心神志とは心は神気を主るという意味である。 広義では神気とは生命活動の状態が顔色、言葉、眼などの表情に表されることを示す。 また狭義では人の精神、意識、思惟活動を示す。 そして人の精神・意識・思惟活動は人体の各生理機能のバランスに影響を及ぼす。 人の精神・意識・思惟活動は大脳の生理機能であると《黄帝内径》にも記述されている が中医学の臓象においては、意識や精神活動は五臓に帰属し主に心の生理機能に属 すると説かれている。《霊枢・邪客》説:”心者、五臓六腑之大主也、精神之所舎也。” つまり心主神志の生理機能が正常であるなら、精神も安定して意識も明瞭で頭脳明晰 である。また外界の情報刺激に敏感に反応する。 この心主神志の機能が損なわれたり 低下すると精神は衰弱し意識朦朧になり外界の刺激に対しても反応が鈍くなると云われ ている。 3、心と他の組織器官との関係 (1)在体合脉、其華在面 脉とは血脈、合とは相互に配分されると云う意味である。華とは反映すると云う意味で 血脈の状態が顔色に表れると云うことである。 脉の生理作用は大まかに二つあり、一つは気血の流れる道であり、気と血は結束力が あり、気によって血流は左右される。 二つに水谷精微(栄養分や酸素を表す)を全身に行 き渡らせ臓腑組織器官を滋養する。 血脉は栄養を輸送し、気血を運行する。これは心主 血脉の生理作用である。 心の機能が旺盛であれば、則ち血脉の生理活動も正常に働く のである。 (二)肺の生理機能 1、主気、司呼吸 肺は吸入された清気(外気)と脾胃の運化作用で作られた水谷の精気を結合させて宗気 を生成する@。故に、肺の呼吸機能により宗気の生成が影響され、また全身の気の生成にも 影響を与える。 また肺は、規則的な呼吸運動により全身の気の昇降出入運動を調節する作用がある。 2、主宣発、粛降 |
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